【📚本(ほん)の紹介(しょうかい)】「星(ほし)の教室(きょうしつ)」

「星ほしの教室きょうしつ」（高田たかだ 郁かおる／著ちょ　角川春樹事務所かどかわはるきじむしょ）

この本ほんは夜間中学やかんちゅうがく、そこで学まなんでいる生徒せいとたち、また学校がっこうがしんどいと思おもっている少年少女しょうねんしょうじょへの応援歌おうえんかである。悲かなしくなった時とき、挫くじけそうになった時ときに奮ふるい立たたせてくれる本ほんでもある。

大阪おおさかのとある夜間中学やかんちゅうがく（実際じっさいに、著者ちょしゃが天王寺てんのうじ中学ちゅうがく夜間学級やかんがっきゅうに長期ちょうき取材しゅざい）が舞台ぶたい。著者ちょしゃが、漫画原作者まんがげんさくしゃ時代じだいの2001年にせんいちねんに漫画誌まんがしに連載れんさいしたものがベース。形かたちあるものにするとの約束やくそくからこの本ほんが、2025年にせんにじゅうごねんの春はるに誕生たんじょう。ストーリーすとーりーは、いじめを受うけ不登校ふとうこうになり、形式けいしき卒業そつぎょうを拒否きょひしたまま20歳はたちを迎むかえた主人公しゅじんこうのさやかが、夜間中学やかんちゅうがくと出会であい、自分じぶんにとっての居場所いばしょを取とり戻もどし、絶望ぜつぼうを希望きぼうへと変かえていくもの。

著者ちょしゃの高田たかだ　郁かおるさんは、漫画原作者まんがげんさくしゃから時代小説じだいしょうせつ作家さっかへ転身てんしんされ「みみをつくし料理帖りょうりちょう」「出世花しゅっせばな」「銀二貫ぎんにかん」等とうのベストセラーべすとせらーがある。エッセーえっせーの「高田たかだ郁かおるのできるまで−晴はれときどき涙雨なみだあめ」には、著者ちょしゃの中学校ちゅうがっこう時代じだいの壮絶そうぜつないじめられ体験たいけんも記載きさいされている。

「星ほしの教室きょうしつ」のさやかには自分自身じぶんじしんの投影とうえいが強つよくあると思おもう。また、作中さくちゅうの登場人物とうじょうじんぶつに漫画原作者まんがげんさくしゃ用瀬もちがせ裕ゆたかを自じしんの代かわりで登場とうじょうさせている。さやかは、大阪弁おおさかべんのはんなりと優やさしい人々ひとびと−両親りょうしん、アルバイトあるばいと先さきのレンタルビデオれんたるびでお店みせ店主てんしゅ、夜間中学やかんちゅうがくの教師きょうしや年代ねんだいや環境かんきょう、国籍こくせきも違ちがう様々さまざまな学習仲間がくしゅうなかまに見守みまもられる。自分じぶんにとっての居場所いばしょも・・勤務先きんむさきのレンタルビデオ店れんたるびでおてん、自宅じたくが両親りょうしんと和解わかいしたことから新あたらしい形かたちでの居心地いごこちの良よい居場所いばしょに変かわっていく。合あわせて夜間中学やかんちゅうがくが加くわわり、さやかにとっての居場所いばしょが広ひろがっていく。決けっして綺麗きれいごとだけではなく、夜間中学やかんちゅうがくの問題もんだい教師きょうし（M教師きょうし）の話はなし等なども挿入そうにゅうされる。

さやかが｛先生せんせい、私わたしは教師きょうしになって、文字もじ・言語げんご・国語こくごを教おしえるひとになりたい｝と
夢ゆめの輪郭りんかくを手てにいれ、中学ちゅうがく時代じだいに「シネしね」と言いわれた呪のろいの言葉ことばが、「シアワセネガウしあわせねがう」に変かわる瞬間しゅんかん～1年前いちねんまえの自分じぶんと同おなじように学校がっこうのフェンスふぇんすにかじりついた女性じょせいを校庭こうていに招まねき入いれる。その女性じょせいが夜空よぞらを観みて、「星ほしがきれい」とつぶやく。星ほしたちが、キラキラ光ひかるこれからの人生じんせいを示しめすような終おわり方かたまで、著者ちょしゃの深ふかい愛情あいじょうとやさしさと感謝かんしゃを感かんじるタッチたっちで描えがかれている。

著者ちょしゃは、いまも夜間中学紹介ビラやかんちゅうがくしょうかいびら（天王寺てんのうじ夜間中学やかんちゅうがくの生徒せいとたちが作成さくせい）を生徒せいとたちと一緒いっしょに道行みちゆく人ひとに配くばられているとのこと、これってなかなかできないことだと思おもいませんか？

（吉井よしい 薫かおる）

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信しんじられないかもしれないが、私わたしが高校生こうこうせいの頃ころ、ある教員きょういん（私わたしが所属しょぞくしていた部活ぶかつの顧問こもん）が不登校ふとうこう経験けいけんのある生徒せいとに向むかってこう言いった。「不登校ふとうこうはお前まえの怠慢たいまんだ」と・・・私わたしは怒いかりを通とおりこして強つよい殺意さついを覚おぼえたが、もちろん抗議こうぎなどできない。文化系ぶんかけいの人ひとにはピンとこないかもしれないが、極端きょくたんな話はなし、指導者しどうしゃから死しねと言いわれたら死しなないといけないくらい、指導者しどうしゃの言葉ことばが絶対的ぜったいてきなのが体育会系たいいくかいけいの世界せかいだ。私わたしはただやり場ばのない怒いかりをこらえるより他ほかになかった。

小説しょうせつの中なかに書かかれていないだけで、きっと主人公しゅじんこうであるさやかも、こんな教員きょういんにたくさん出会であってきたに違ちがいない。「大怪我おおけがは事故じことして処理しょりされ、さやかに暴力ぼうりょくをふるった者ものや、いじめに加担かたんした生徒せいとたちは、誰だれひとりとして咎とがめられていない」だからもう気きが済すんだだろうと思おもっていたが、いじめが無なくなることはなかった・・・もし、さやかがいじめを苦くに命いのちを絶たってしまったとしても、教員きょういんたちは心こころから助たすけられなかったことを悔くいるわけもなく、いかに自分じぶんたちに責任せきにんがないかアリバイありばいを作つくりに必死ひっしになり、「悪質あくしつな悪あくふざけはあったがいじめではない」とか会見かいけんで言いうのだろう。生徒せいとが死しんでいるんだぞ・・・などと言いっていると本題ほんだいと関係かんけいなくなってしまうのでこの話はなしはここまで。

さて、夜間中学やかんちゅうがくに入学にゅうがくしたさやかは、事情じじょうは異ことなるが同おなじく不登校児ふとうこうじだった青年せいねん、健児けんじと話はなしたことで「苦くるしみを抱かかえるのは、さやかばかりではなかった。大おおげさなようだが、救すくわれた、と思った。」という気持きもちになる。同情どうじょうを乞こうているなどと謗そしる人間にんげんもいようが、辛つらい体験たいけんを打うちあけられる人ひとがいるというのは、生いきていく上うえで大おおきなアドバンテージあどばんてーじになるのではないか。しかししかし私わたしが思おもうに中高生ちゅうこうせいの時ときにそれはなかなか難むずかしい。暗くらい話はなしは敬遠けいえんされがちであるし、最悪さいあくの場合ばあいさやかのようにいじめられていたことを理由りゆうにバカばかにされ、いじめにつながる、なんてケースけーすもある。中高生ちゅうこうせいもなかなかシビアしびあなのだ。一方いっぽう、さやかはどうだろう。漫画家まんがかの用瀬もちがせ先生せんせい、戦災孤児せんさいこじの蕗子ふきこ、家族かぞくを失うしなった遠見とおみ、他ほかにもたくさん、さやかは彼かれらの話はなしを聞きいて（人生じんせいを目まの当あたりにして、とも言いえるだろう）涙なみだを流ながした。それは、安やすい同情どうじょうなどではない、言葉ことばにするのは難むずかしいのだがさやかにとって彼かれらが本当ほんとうの仲間なかまであるからこそ流ながれる涙なみだだろうと思おもう。それができるのが夜間中学やかんちゅうがくなのではないか。もちろん、学校がっこうなので勉強べんきょうが本分ほんぶんだ。けれども、学まなぶ中なかで、さやかのように「夢ゆめの輪郭りんかく」を求もとめ、辛つらいことも幸しあわせも共有きょうゆうできる友ともを得えることは、本文ほんぶん中ちゅうにもある「誰だれにも奪うばわれないものを手てに入いれる学まなび」にちがいない。

本稿ほんこうでは、あらすじ中心ちゅうしんではなく、私わたしが本書ほんしょを読よんで湧わいてきた考かんがえを中心ちゅうしんに書かかせていただいた。この小説しょうせつのラストシーンらすとしーんはさやかが初はじめて夜間中学やかんちゅうがくに足あしを踏ふみいれた時ときと同おなじく、ラジオらじお体操たいそうをしながらきれいな星ほしの下した、さやかが「あああ、ここは星ほしの教室きょうしつだ」とつぶやく。

自分じぶんも今度こんどの木曜日もくようび、夜空よぞらを見みながら帰かえろうかな。

（古澤ふるさわ 康平こうへい）