第65回全国夜間中学校研究大会・兵庫大会報告
日時:2019年12月6日(金)/12月7日(土)
場所:神戸市総合教育センター(神戸市中央区東川崎町1-3-2)
「ちば夜間中学をつくる会」からは、4名(植村・今・竹内・中里)が参加しました。
会場の神戸市総合教育センター 正面に学びを象徴する鉛筆の大きなモニュメントが建っている
第1分科会会場 「教科内容・カリキュラム」について提案、協議が行われた
第1分科会 教科別分科会(1日目午前)
日本語教育(入門)
報告者:神戸市立兵庫中学校北分校(1976年開設) 新保万里子さん
「0時間目の活用」
国語・数学は3学年混合の習熟度別クラス編成、社会・理科・英語は学年別、実技は全学年一斉授業で行っています。在籍生徒は外国人が多く、2011年度より日本語希望者に対して、0時間目(16:00~16:50)の学習を実施しています。
日本語学習については、当初より毎週月曜日に神戸YWCA学院の協力を得て行っています。費用については、県の補助金を活用しています。火曜日は日常生活に必要なことば(自己紹介、買い物、電車・バス、郵便局、銀行、病院など)水曜日は「かたかな、ローマ字、漢字」、木曜日は「理科のことば」、金曜日「社会科のことば」を主に学習しています。
1995年の阪神淡路大震災をきっかけに「やさしい日本語」が考え出され、こども・障がい者・外国人などにもわかりやすい日本語を学習しています。
学習例:「やさしい」→「優しい」と「易しい」
例:もし雨が降ったら、球技大会は延期します。→雨です。球技大会はありません。
領域別分科会(1日目午後)
第5分科会 増設・教育条件・啓発活動
この分科会は特に報告者は決まっていませんでしたが、全国各地で自主夜間中学を開校している団体から、公立の夜間学級開設に向けた動きの報告がありました。千葉でも市教委が来年度にアンケート実施の予定です。岡山県は2016年に27,000枚のアンケートを行いましたが、23件の問い合わせ、入学希望者は5名の結果でした。2019年に岡山市が自主夜間中学や教育委員会などと連携して行った結果、17,000枚のアンケート調査に回答は810枚あったとのことです。1月中には結果が公開されるとのことです。薬局や、コンビニ、スーパーなどにも協力をお願いしたそうです。やり方次第で結果に大きな差が出ることを実感しました。千葉市の調査に向けては実施の数、協力団体や実施方法など確認していこうと思います。
(竹内 悦子)
尼崎市立成良中学校琴城分校の正門 夜間は電飾看板の文字が明るく照らされて浮き彫りになる
補食のコッペパンと牛乳(牛乳はお湯で温められる)ジャム等が付くこともある。一食98円
保健室兼相談室 琴城中には専任のスクールヘルスリーダーが在籍している
琴城中校内に掲示されていた尼崎市立琴ノ浦高等学校の生徒募集案内に「学び直しを支援します」の言葉が明記してある。琴ノ浦高校は琴城中のすぐ近くにある
学校見学(1日目夕方から)尼崎市立成良中学校琴城分校
- 5学級編成
- 全校生徒:31名在籍(男性13名、女性18名:外国籍21名)
- ネパール10名、中国7名、韓国2名、タイ1名、バングラデシュ1名
授業見学(1校時:理科、2校時:国語 ~授業内容の一部を紹介~)
理科の授業
- 豆電球が点くかどうかで通電素材実験(プラスチック、空き缶、十円玉など)
生徒:「ガラスはどうなんだろう?」
先生:「窓ガラスで試してみたら。」
生徒:「豆電球は点きません!」
先生:「ガラスは電気を通さないんだね。」 - 地元尼崎の地形図を使って「流れる水のはたらきを理解する」授業
授業の終わりに、尼崎は元は海だったことを理解する。 - 月の満ち欠けの周期を考える。(三日月や満月などの形状と名称についても理解する。)
- 「ナスとトマトのパスタ料理法」。コンロの使い方、火力の強さ、火力調節の仕方を理解する。(炎の強さを理解する。火力の弱、中、強の種類をイラストで板書して説明する。)
国語の授業
- 体の調子が悪い時、お医者さんや友だちにうまく説明できますか。
「頭がガンガンする、フラフラする、ゾクゾクする、チクチクする、ムカムカする」などのオノマトペは、どんな痛みや体の調子を表していますか。意味カードやイラストカードを組み合わせる。 - 作文「出身地はどんな所ですか。」
(例:「私のふるさとは〇〇です。一年で〇月が一番○○です。」)
授業後半はペアになって、対話形式で発表し合う。お互いのことを理解し合う。 - 「爆笑、大笑い、笑顔、失笑、苦笑い、微笑み」の意味の違い。
イラストの描かれたカードと組み合わせる。 - 「巨、匠、相、互」の筆順を考える。
授業参観した感想
識字学級の教室では、複数の教師で支援されていました。どの教室にも前方上に平仮名と片仮名の五十音図と、「なん、なに、どこ、いつ、だれ、どれ、いくら、どう、どんな」の言葉が掲示されていました。
また、どの授業も穏やかな雰囲気の中にも学びへの真剣な取り組みが見られ、生徒と教師との信頼関係が感じられました。生徒一人ひとりに寄り添ったとても分かりやすい授業展開でした。また、1学級が少人数編成ということもあり、家族的で温かい雰囲気でした。
多様な出自(ルーツ)、言語、文化を持つ生徒たちが、他生徒への関心、理解、共感を深め、ともに学ぶ仲間としての関係を築くための授業作りを目標に、創意工夫された授業展開でした。
(植村 幸雄)
夜間中学の多文化共生の軌跡をたどる(2日目 全体会)
二日目は、自主夜間中学の関係者によるパネルディスカッション、生徒の体験発表、そして兵庫の夜間中学の生徒による「兵庫からの発信」が披露されました。さらに、文部科学省の取組などの説明があり、最後に義務教育未修了者の学びの保障を求める要望書が採択されました。
特に印象的だったのは、体験発表をした生徒さんの「日本生活でできることが増えた」という言葉です。夜間中学での学びが生活での実践につながるものだということがわかります。また、「色々な人と出会い、悩みを共有できた」という話からは、夜間中学が生徒さんにとって安心して学べる環境となっていることが窺え、改めて夜間中学の役割の重要性を実感しました。
当日の会場には、様々な国籍や年齢の人びとが、生徒として、あるいはスタッフとして、それぞれ役割を持ちながら自然に参加していました。戦後の混乱期から始まった夜間中学には、在日コリアンやインドシナ難民の方々が多く通っていたそうです。長い間、多様な人びとと共に歩んできた関西の多文化のすがたが垣間見えたような気がします。
(今 千春)
発言される夜中のレジェンド高野雅夫さん。「私は夜間中学を卒業したことを誇りに思います!!」
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来年の「全国夜間中学校研究大会」は、千葉県市川市で開催予定です。
当会からも多くの参加者が見込まれます。
夜間中学に関心のある方々、ご一緒に行きませんか。